Immich のパートナー共有と共有アルバムの使い分け
Immich の共有は3種類。ライブラリ全体を渡すパートナー共有、写真を選ぶ共有アルバム、アカウント不要の公開リンク。必要な設定、External Domain の落とし穴、v3.2.2 時点の限界まで。
Immich の共有は3種類あり、前提と手間が違う
Immich のパートナー共有と共有アルバムは別の機能です。家族やパートナーに写真を見せる方法は3つあり、必要な準備がそれぞれ違います。パートナー共有は、同じサーバー上にある2つ目のアカウントにライブラリ全体を片方向で見せる方法で、写真を選ぶ作業がありません。共有アルバムは見せたい写真だけを入れて、同じサーバーのユーザーを招待します。公開共有リンクはアカウントを持たない相手にも渡せますが、サーバーが外から到達できていないと、相手の端末ではそのリンクが開きません。
この記事の画面と手順は Immich v3.2.2 (2026 年 9 月 15 日リリース) で確認しています。Immich の UI は更新が速く、メニューの名前やトグルの位置はバージョンで変わります。記事と画面が違うときは、目の前の画面の表記を信じてください。トグルの初期状態は、変わりやすいのでここでは断定しません。
docker exec -it immich_server immich-admin version
docker exec -it immich_server immich-admin list-usersimmich-admin version はサーバー側のバージョンを出します。記事のバージョンと差があるなら、画面の違いはそこから来ています。immich-admin list-users は登録済みユーザーの一覧を出すので、2人目のアカウントが作れたかどうかの確認に使えます。Immich そのものをまだ立てていない場合は、VPS に Immich を構築して Google フォトから移行する手順が先です。
パートナー共有は何を相手に渡す機能か
パートナー共有は、同じ Immich インスタンスにいる別のユーザーに、自分のライブラリ全体を見せる機能です。設定は Web UI のユーザー設定 (User Settings) にあるパートナー共有の項目で、相手のアカウントを選ぶだけです。アルバムを作る必要はありません。あとから撮った写真も、バックアップが終われば自動的に相手に見えます。2人目のアカウントは管理者が Administration > Users の Create user から作ります。
公式ドキュメントによると、パートナーに渡るのはアーカイブ済みとゴミ箱の中身を除いたすべての写真と動画で、GPS を含むメタデータも一緒に渡ります。相手はそれをダウンロードでき、さらに共有リンクやアルバムとして第三者に渡すこともできます。つまりこれは全部見せる設定です。旅行の写真だけ見せたい、という用途には向きません。
共有は片方向です。公式ドキュメントの言葉でも、相手のライブラリを自分が見るには、相手も自分に共有する必要があります。夫婦で互いに見せ合う構成は、2人がそれぞれ1回設定する形になります。片方だけ設定した状態は、片方だけが相手の写真を見られる状態です。
パートナーごとに Show in timeline を切り替えられます。有効にすると、相手の写真が自分のメインのタイムラインに混ざって表示されます。無効なら、相手のライブラリはパートナーの画面から見る形になります。この切り替えは Web (アカウント設定のパートナー共有) とモバイルアプリの両方にあります。
公式ドキュメントは、パートナー共有に含まれないものとして、すでにあるパートナーのアルバム、お気に入り、人物と顔認識のデータを挙げています。相手が誰の顔にどんな名前を付けたかは、こちらの検索には出てきません。写真は見えても、相手の整理の結果は見えないということです。
重複の扱いにも癖があります。重複の検出はユーザーごとに行われるため、同じ写真が2つのアカウントに入っていると、タイムラインに同じ写真が2枚並びます。これは公式ドキュメントに書かれている既知の挙動で、設定で消せる種類の問題ではありません。2人が同じイベントの写真を両方バックアップしていると、必ずこれに当たります。
パートナー共有はライブラリの統合ではない
ここが一番誤解されます。パートナー共有は閲覧の権限であって、2人のライブラリを1つにまとめる機能ではありません。相手がアップロードした写真は相手のアカウントの中にあり、ディスク上も相手のユーザー単位のディレクトリに入ります。Immich がどのパスにファイルを置いているかは、Immich が Docker 環境で写真を実際に保存している場所を見ると具体的に分かります。
ストレージも別勘定です。管理者は Administration > Users でユーザーごとにストレージクォータを指定でき、空欄なら無制限です。クォータを設定した場合、上限に達したユーザーはアップロードできなくなります。2人で同じイベントの写真を両方バックアップすれば、ディスクの消費はおおよそ2倍になります。容量の見積もりは Immich に必要な RAM とストレージ容量の考え方を先に読んでおくと外しません。
パートナーを解除しても、ファイルは1バイトも動きません。相手の画面からあなたのライブラリが見えなくなるだけです。逆に言えば、解除は安全な操作です。写真が消える心配はありません。ただし、解除前に相手がダウンロードしたコピーや、相手が作った共有リンクの扱いは別の話になります。渡した写真を取り戻す機能はありません。
写真を本当に1か所にまとめたいなら、方法は2つです。1つのアカウントを2人で使うか、まとめたい写真を共有アルバムに入れるかです。パートナー共有はどちらでもありません。
共有アルバムは見せたい写真だけを選ぶ
アルバムを作り、共有アイコンから同じインスタンスのユーザーを選びます。権限は editors (read-write) と viewers (read-only) の2種類です。editor として招待した相手は、そのアルバムに自分の写真を追加できます。運動会の写真を2人で1か所に集める作業は、パートナー共有ではなく共有アルバムの仕事です。
アルバムに入れても、写真の所有者は変わりません。アップロードした人のライブラリにあるファイルが、アルバムから参照されるだけです。だから相手がアカウントごと削除されると、その人がアルバムに入れた写真もアルバムから消えます。共有アルバムはバックアップの代わりにはなりません。
招待相手は同じサーバーのユーザーである必要があります。相手にアカウントを作る気がないなら、次の公開リンクになります。
公開共有リンクとそのオプション
写真や動画を選んでから、またはアルバムの共有アイコンからリンクを作れます。URL にはランダムな文字列が入ります。公式ドキュメントの説明では、このランダムな URL が、勝手に推測されないための秘密そのものです。つまりパスワードを付けなければ、URL を知っている人は全員開けます。LINE のグループに貼った時点で、そこから転送された先の相手も開けると考えてください。
リンクには有効期限 (Expire after)、パスワード、メタデータの表示、ダウンロードの許可、アップロードの許可を設定できます。正確なラベルと初期状態はバージョンで変わるので、作成ダイアログに出ている表記で判断してください。ダウンロードを許可しなくても、画面に表示された画像はスクリーンショットで持ち出せます。ダウンロードのトグルは著作権の管理ではなく、相手の手間の調整です。
作成済みのリンクは後から一覧できて、期限やパスワードの変更、削除ができます。相手との関係が変わったときにリンクを消すのは手作業なので、最初から期限を短く入れておくほうが安全です。期限のないリンクは、忘れられたまま生き続けます。
公開リンクが相手の端末で開けないのはなぜか
公開リンクだけは、サーバーの外部公開に依存します。サーバーが外から到達できて、かつ Immich が自分の外部 URL を知っている場合にだけ、リンクは役に立ちます。
管理画面の Administration > Settings > Server Settings に External Domain があります。ドキュメントの説明は、共有リンクとメール通知の中のドメイン名を上書きする設定で、末尾にスラッシュを含めない、というものです。ここが空のままだと、生成されるリンクはあなたがその時アクセスしていたアドレス、たとえば http://192.168.1.50:2283 のような内部アドレスのままになります。それを送っても、相手のスマホはそのアドレスに到達できません。相手には接続できないというエラーだけが出ます。リンク自体は正しく、届く先が存在しないだけです。
確認は自分でできます。自分のスマホで Wi-Fi を切り、携帯回線だけにしてから、作ったリンクを開きます。開けば相手も開けます。開かなければ、外部からの到達経路か External Domain の設定のどちらかが足りていません。パソコンのブラウザで確認すると、家の LAN から見ているので必ず成功し、問題に気付けません。
外部から見えるようにする作業自体は、この記事の範囲ではありません。VPS 上の Immich にドメインを向け、443 を開け、リバースプロキシで TLS (transport layer security) を張る形が標準で、Nextcloud を Docker と TLS で公開するときと同じリバースプロキシの組み方がそのまま使えます。Immich 側の前提は公式の Remote Access ガイド にまとまっています。External Domain に入れる URL は、そこで実際に外から開けることを確認した URL と同じ文字列にしてください。ポート番号やスキームが違うだけでもリンクは壊れます。
確認した環境
Immich v3.2.2 (2026 年 9 月 15 日リリース)、Docker Compose での標準構成、Web UI とモバイルアプリの両方。External Domain の説明文とパートナー共有の仕様は公式ドキュメントの記述に基づきます。
iPhone と Android が混ざった家庭でどう運用するか
2人目が最初に開くのはモバイルアプリです。ここに1つ大きな制約があります。v3.2.2 時点の Immich アプリには、複数アカウントを同時に保持して切り替える機能がありません。要望は 2023 年から出ていますが、実装されていません。同じ端末で2人分のアカウントを行き来するには、サインアウトして入り直すしかありません。
だから運用はこうなります。各自の端末に、各自のアカウントでログインします。自動バックアップはログイン中のアカウントに入るので、2人の写真は最初から別のライブラリに入ります。そのうえで、互いにパートナー共有を設定するか、共通の共有アルバムを作ります。共有の iPad に2人分のアカウントを入れて切り替える運用は、アプリの仕組みと合いません。
ログイン画面ではサーバーの URL を入力します。家の中だけで使うなら内部アドレスでも動きますが、外出先でも使うなら、外から解決できるドメインを入れてください。内部アドレスで設定した端末は、家を出た瞬間にバックアップが止まります。しかもエラーは目立たないので、数週間分の写真が上がっていないことに後で気付きます。iPhone と Android で画面は少し違いますが、ログインとバックアップの考え方は同じです。
結局どれを選ぶか
- 同居する相手に全部見せてよい: パートナー共有。設定は1回で、以後は何もしません。
- 見せる範囲を決めたい、相手にも写真を足してほしい: 共有アルバム。相手は同じサーバーのユーザーである必要があります。
- 相手にアカウントを作らせたくない: 公開リンク。パスワードと期限を付け、サーバーが外から開けることを先に確認します。
3つは排他ではありません。実際の家庭では、夫婦の間はパートナー共有を両方向に設定し、祖父母には期限付きの公開リンクを送る形が落ち着きます。どれを選んでも、写真の実体は撮った人のアカウントの中にあるという前提は変わりません。
FAQ
パートナー共有と共有アルバムはどちらを使うべきですか
見せる範囲で決まります。パートナー共有はライブラリ全体が片方向で相手に見えます。アーカイブとゴミ箱の中身を除いたすべての写真と動画が対象で、GPS を含むメタデータも渡り、相手はダウンロードもできます。選別が不要な代わりに、見せない写真を作る唯一の方法はアーカイブに入れることです。共有アルバムは中身を自分で選び、editors (read-write) として招待すれば相手も写真を追加できます。同居する相手はパートナー共有、目的が決まった写真の束は共有アルバムが合います。
パートナーを解除すると相手に渡った写真は消えますか
消えません。解除はファイルを動かしません。相手の画面からあなたのライブラリが見えなくなるだけで、写真はあなたのアカウントに残り、相手のアップロードは相手のアカウントとストレージに残ります。逆に、相手がすでにダウンロードしたコピーや、相手が作った共有リンクを取り消す機能はありません。渡した写真を回収できない前提で共有先を決めてください。
公開リンクを送ったのに相手が開けません。何を直せばいいですか
ほぼ必ず、リンクの中のホスト名が原因です。Administration > Settings > Server Settings の External Domain が空だと、リンクはあなたがアクセスしていた内部アドレス (たとえば http://192.168.1.50:2283) のまま生成され、相手の端末はそこに到達できません。自分のスマホで Wi-Fi を切り、携帯回線だけでそのリンクを開いて再現してください。開かないなら、外部からサーバーに到達できる経路を用意し、そこで実際に開けた URL をそのまま External Domain に設定します。末尾のスラッシュは付けません。
家族2人の写真を1つのライブラリにまとめられますか
パートナー共有ではまとまりません。閲覧の権限が増えるだけで、ファイルは撮った人のアカウントに残り、ストレージも別に消費します。さらに重複の検出はユーザー単位で行われるため、同じ写真が両方のアカウントにあるとタイムラインに2枚並びます。本当に1か所に集めたいなら、1つのアカウントを2人で共用するか、まとめたい写真を共有アルバムに入れて運用するかのどちらかです。
モバイルアプリで2人のアカウントを切り替えられますか
v3.2.2 時点では切り替えられません。複数アカウントを同時に保持する機能は 2023 年から要望が出ていますが、未実装です。同じ端末で別のアカウントを見るにはサインアウトして入り直す必要があります。現実的には、各自の端末に各自のアカウントでログインし、パートナー共有か共有アルバムで見せ合う形にしてください。自動バックアップはログイン中のアカウントに入るので、端末とアカウントを1対1にしておくほうが事故が起きません。